「π パイ」脳が数字に殺される。『ブラック・スワン』『ノア 約束の舟』の鬼才にして名匠ダーレン・アロノフスキー監督が、ハーバード大学卒業の5年後に作り上げた、初長編。モノクロの強迫的なイメージで綴られる異色のプロットと表現によるスリラーは、日本ではシネマライズのレイトショー他で公開され、大きな反響を呼んだ。1998年サンダンス映画祭最優秀監督賞1999年インディペンデント・スピリット賞初脚本賞受賞「レクイエム・フォー・ドリーム」人生の岐路を彷徨う母親とヘロイン漬けの息子。そんな2人をフィルターにさまざまな警鐘を打ち鳴らす作品。原作著者のヒューバート・セルビー・Jrと監督のダーレン・アロノフスキーによる共同脚色となっており、飽食の現代社会を背景に悲劇の顛末に終始する「物語」となっている。その情景は極めてリアルで、価値観を喪失するシルバー世代と排他的価値観を由とする若年世代の姿をありのままに投影している。内容の衝撃さだけでなく、カット構図や編集スキルにも優れた映像は芸術点でも最高の域に達しており、その強烈なメッセージもほぼ永久に廃れるものではない。モンスター不在のホラー作品にしたかったと云う監督のアロノフスキーだが、正に正真正銘のリアルホラーである。原題 REQUIEM FOR A DREAM